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Delicious Way


 大野愛果によって提供されたsweetな楽曲のメロディーの印象に合せて、表面的には命名されたように見えるタイトル:Delicious Way 直訳すれば「美味しい道」である。
 しかし、これがタイトル曲に選ばれ最初に置かれた意味を以下考えてみようと思う。

 ここで想起されるのが、筆者が高校時代、世界史の授業で教わったトマス・ペインの”Common Sense” 「常識」である。アメリカ独立戦争を指導する結果となったパンフである。
 現実には18C後半当時の限定された地域の限定された人々の間での「共通の感覚」であって、”常識”と称されるものではなかった。
 しかし、一種の固有名詞的なユニークさを持ったこのタイトルの小冊子がアメリカ植民地人の支持を得たのは、その思想内容に普遍性を含んでいたからに他ならない。
 同様のことが、Delicious Wayにも該当すると思う。
 Delicious Wayという言葉は少なくとも現在熟しておらず、その意味で楽曲の作品名として 「」 (カギ括弧)付きで表記される存在に過ぎない。
 しかし、その意味内容には相当程度思想性を含んでいる。
 この曲のテーマは、開放感のある「夏という季節」と無限へと続くイメージを持つ「海とその水平線」、そして書き手の現在から将来へ向かう「スイートな夢」の3つである。倉木麻衣は、最後のメインテーマを表現するため前二者を用い、それを「美味な(水平線の青の向こうの)道」と規定した。
 文学性の香り高い作品なのである。
 それが味覚に喩えられている点は、あえて女性らしいと言えば言えることだとは思う。また、the Milky Way 「天の川」と対比することが出来る点において、幼い夢と評することも出来よう。
 ある意味、倉木麻衣の出発点はスイートな夢であり、現在もなお夢を実現させる過程にある。
 仮にこの原点を忘れた時に、汎百な歌手の群れに混じり、倉木麻衣は倉木麻衣ではなくなる。
 それは、本人が一番認識し、ある意味自戒していることだろうと想像する。
 したがって、最後のコーラス・ワークは、無限へと続く「Into the sweet sky...」である。
 さらに大和ことばと英単語句の、ごく自然な配合が歌詞を形成している。
 例えばそういったことを想像してみないと、最後のコーラスが美声で凄いな、とか、単にユニークなタイトルだなという感想で終わるのだろうと思う。
 そしてこの曲の意味はよくわからないけれど「倉木麻衣」という子は美人だな、だから好きだなどと思ってファンになり、楽曲の持つ思想性と普遍性に思いが至らなければ、どこかの時点できっと「飽き」が来てファンをやめるという結果になると思う。
 舌足らずの面を否定し去ることは難しい。しかし、天の川にロマンを感じられる人であれば確かに感得出来る筈の、文学性の香り高い作品なのである。







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